ハコでループさ


 INOSTAのデビューアルバム「ハコでループさ」(アルファー・エンターティンメント)を聴き、ZENは大きな衝撃を受けた。日本人の20代で、J・POPに犯されていない、繊細でセンス溢れるミュージック・コンポーザーが存在するのかという驚きである。ZENは日本のポップ・ミュージックをほとんど聴かない。最近ではアンジェラ・アキのHOMEくらいだ。この数日、とてもハッピーだ。商業主義とは全く別の場所で、こんなにも素晴らしい音楽が創られていて、しかもアルバムとしてきちんとまとめられていることが。ヒマがあれば部屋で聴いている。

 あまりにもチャーミングなので、アルバムのプロデューサーである森晴彦さんに直接お会いし、INOSTAとは一体、どういうミュージシャンなのかを尋ねた。INOSTAは住職をされているという。一年に2000本くらい、送られてくるデモテープを聴いて新人を発掘する森さんが出会ったのが、INOSTAのアルバムの表題作でもある「ハコでループさ」だという。一人でシコシコと録音しているミュージシャンが陽の目を浴びる機会は少ない。インディペンデント系といえば、たいていはライブハウスか、ストリート出身者だからである。森さんは言う。「目の前の観客を動かさない音楽が、市場で一般に説得力を与えられることはないからね。」
 それでも、一人宅録のこの「ハコでループさ」がプロのプロデューサーの耳にとまったというのは、よほどインパクトがあったからであろう。

 ZENはいささか高揚している。センスに富んだ音楽を、ほとんどの者が知らないのだ。何か特権的な気分に浸っている。”百読は一聴に如かず?”であるが、聴きたい人はアマゾンで頼んでください。曲の良さを言葉で説明することくらい馬鹿げたことはないから。

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