NISSU橋


 ZENはかつて英会話トーク・フォーラムを企画して、英語雑誌の広告で集まった有志と毎週末、喫茶店の会議室で、英語のフリートークをしていた。そのとき、知り合ったのが留学生のスロバキア人、カタリーナだった。ZENは彼女との交遊を通じて、自分の偏見を改める貴重な機会を得た。まず、このことについて彼女に感謝したい。

 社会主義国というと、われわれ日本人はどうしても、中国やロシヤ(かつてのソビエト)といった大陸国家を思い浮かべたり、あるいは北朝鮮やキューバといった独裁体制の国を考えがちだ。そこから類推して、社会主義はすべてにおいて資本主義よりも劣っていたかのような錯覚を持つ。

 しかし、東欧のかつての社会主義諸国は、当然のことだが、それぞれ異なる文化や伝統を持ち、また社会主義の優れた面も享受していたことは、あまり知られていない。例えば、教育機会の格差がほとんどないことや雇用や失業に対する不安がないことなどは、いずれも今の日本の政治が解決していない政策である。だから社会主義を復活しろなどと時代錯誤を言っているのではない。
 この数年、わが国の政治イッシューは幼児的な単純さの中で推移してきたように思う。政治学を専攻するカタリーナからZENはいろいろなことを学んだが、新聞の読み方も教えられた。署名記事で事実内容をチェックし、誤ったことを書く程度に応じて記者をランクづけして、記事の信頼度を数値化するというものである。ヨーロッパの大学で、”翻訳”が業績になることはない。わが国の文化系学問は、”翻訳の編集”が業績になってしまう。何という差だろうか。学問において、依然として日本は欧米に追いついていないと認めざるをえない。

 なぜスロバキアのように教育程度の高い国家が長い間、ソビエトに従属してきたのかと不思議に思うが、エネルギーをソビエトに全面的に依存していた。首根っこをおさえられていた資源に乏しい小国の”厳しい現実”というものがある。日本も決して他人事ではない。
 
 スロバキアとよく間違えられるスロベニアという国がある。スロベニア人のアンドレから国情を聞いたとき、同じスラブ系国家でありながら、スロバキアとスロベニアは著しい相違を持つことを知り、ZENは目を開かれた。スロバキアは、もともとハプスブルグ家のオーストリー帝国の中心にあった。今でもウイーンとの関係は濃密であり、かつての帝国だったこの領域を東欧ではなく、”中欧”と位置づける学者もいる。

 カタリーナは留学を終えて故郷に戻り、日本とスロバキアの架け橋になるホームページを作成した。彼女のような見識あるパーソンが日本と自国との相互理解のために行っていることを無視することはできない。

 http://www.nissubashi.org

 NISSUBASHI(日ス橋)とは、日本とスロバキアに架ける橋の略語である。日本語とスロバキアの両語で見ることができるから、ホームページ作成の主旨・コンセプトを理解することができる。スロバキア語の勉強の一助にもなるだろう。

 上記HPのトップページの左側(O Japonska po slovensky)をクリックし、次画面でFORUMをクリックしてほしい。Poezia Haikuに至ります。ZENが東欧、バルカン半島諸国の俳句作品をピックアップしたものを掲載している。彼女との友情の証だ。俳句は日本が誇る世界的な文学形式である。

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