鎮守の森

 古い神社を愛する園田義明さんが「隠された皇室人脈」を講談社から出版され、そのとき”差し止められた”原稿記事に関しての話を伺った。
 園田氏は、楠木から樟脳が大量に取れることと明治時代に行われた神社合祀令の裏にある利権の関係を解き明かされた。南日本及び太平洋東海地方沿岸に棲息する楠木は、神社の鎮守の森を支える樹木であったが、そこから取れる樟脳が防虫剤、セルロイド、塗り薬の原料となるため、日本の外資獲得の主要輸出産品となった。このため、積み出しが行われる国際港、神戸港を中心とする近畿、四国圏で楠木が激減する事態となる。それを合理化したのが、神社合祀令であり、この法制定には利権が絡んでいた。
 神社合祀令は、表向きには近代国家の推進の中で、旧来の宗教勢力の土地の合理化、没収という形を取るが、裏では、敷地内にある楠木という経済財の伐採にあったという。

 このことは、豊かな杜をたたえていた神社から自然崇拝の荘厳さが喪失され、日本人が長い間持っていた素朴な宗教意識を変質させることにもなった。宮崎駿の映画のテーマでもある自然との共存は、21世紀が環境の世紀ともいわれる中で、極めて重要な意味を持つ。

 日本人の伝統的な美意識や生命観、文明観は、これから世界に発信していくべきものだ ろう。日本神道の持つ”万物に神が宿る”という思想は、欧米人が分類するアニミズムとは異なるものである。神道も、明治以降の国家神道ではなく、明治以前の神道信仰の意味 を再確認する必要があるだろう。

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