風餐 プロファイル

 

風餐は、府川雅明、林日出民、真下茂俊の3人により、1993年から1999年までの7年間、毎年1回発行された雑誌の名称である。

風餐は、机上で完結する普遍的論理を否定する。場に身を投げ入れ、既存の論理が否定される体験を起点にして、表現を開始する。         

具体的には、直感的に任意の座談の場所を決定し、その現地に赴いて現地の風や匂いや色など五感を遊ばせて、感じ取りながら即興的なテーマで座談会を挙行する。その後、参加した各自がその場から獲得したものを持ち帰り、小説、イラスト、俳句、写真といった表現によって、場の意味を深耕する。

2号以降は、このコンセプトを承認するゲスト・アーチストを迎え、別に対談を行って、表現行為の意味を探り、同時に作品も紹介してきた。

1999年9月9日の第7号の発行以降、休刊している。



 
風餐(fou saint)出版リスト


 


【創刊号】 1993年7月15日発刊

尻焼温泉露天風呂 極限座談会 「肉体について」
死体と骨体/身体加工のこと/現代の肉体の危機
身体論……人間の身体は資源であり、可塑性を持っている。肉体意識とその活用方法は文化によっていかようにも変容する。
死体論……死体認識が希薄になると宗教が弱体化する。
腐 論……肉体の腐食は創造性とパワーを持つ。      
男女論……男は女よりも自分の性に対する意識が不安定なので、観念的になる。

作品)頁順に 閻魔虫(俳句 腐川雅明)/ネオ・デウス・アローマ(小説 林 日出民)/世紀末通信(イラスト 真下茂俊)
 


【第2号】 1993年12月25日発刊

谷中墓地座談会 「霊を語る」
墓地のトポロジー/闇おぼろのアルケオロジー/宗教のストラテジー/霊魂のエコロジー
宗教論……宗教(イデオロギー)と宗教心(心理作用)と霊感(物理)は別である。
霊魂論……自分の感覚でとらえた正直な不可解さをわれわれは他人の言葉で語ってしまう。

作品)頁順に 修陀羅(小説 林 日出民)/霧積(俳句 腐川雅明)/世紀末通信(イラスト 真下茂俊)
ゲスト特集 金城真喜子(写真家)


 



【第3号】 1994年12月24日発刊

韓国ソウル・明洞(ミョンドン)座談会 「アジアの路地について」
ソウルには底深く美しいハングルが流れていた……
路地論……路地は資本が入らない精子の遊び場。      
日本論……日本列島は受け入れ一方の変態細胞体。

作品)頁順に 世紀末通信(イラスト 真下茂俊)/眼玉(小説 林 日出民)/愛のサバキ(小説 府川雅明)/LOST CITIES(翻訳 有明ともみ)
ゲスト特集 塩沢秀樹(写真家)
風餐俳談 ヴィットリオ・ブランドー二さんと俳句を語る
風餐ロシア支局レポート  ハバーロフスクの風人たち 岡田和也


【第4号】 1995年12月31日発刊

横浜黄金町高架線下座談会 「黄金街を味わう」
家族論……ヤンママを別にして、日本に確固とした家族観は未だ生産されていない
型 論……日本人は型を受け入れる良いセンスを持っている。
ガード下論・・自分がただの点として生きられるかどうかが試される場がガード下である。


作品)頁順に 世紀末通信PART1、PART2(イラスト 真下茂俊)/京浜急行(俳句 腐川雅明)/亡国の日々(小説 林 日出民)
ゲスト特集 阿部尊美(アーチスト)
風餐ロシア支局レポート ハバーロフスクの風人たち 岡田和也・ヴラジミール=ヴェートロフ
 

   


【第5号】 1996年9月20日発刊

新宿駅西口ホームレス座談会 「路上を語る」
ホームレス論……ホームレスでもプライドを持っていれば個人の尊厳や勇気は失われない。     
漫画論……漫画はくだらないものである。
芸能論……芸能人にプライバシーは存在しない。
ポストバブル論……金やモノを増やすことが幸福ではなく、不要なものを捨てることが幸福だ。
相撲論……実力主義に傾くと外人力士が多くなる。もっとファンシーに。
男女論……人間社会は女性中心がいい。男は女を喜ばせることに奉仕すべきだ。


作品)頁順に 巻頭写真(金城真喜子)/世紀末通信(イラスト 真下茂俊)/詩(小松静江)/架空地図(地図 ハピィ氏橋・テキスト 林 日出民)/密約(俳句 腐川雅明)/者らへの挽歌(小説 林 日出民)/振り「美」車論(評論 目良盛夫)
ゲスト特集 篠本賢一(演出家)
風餐ロシア支局レポート ハバーロフスクの風人たち 岡田和也・マリーナ=サーフチェンコ
プロレス特別対談  ハピィ氏橋 VS 府川雅明
 


【第6号】 1997年12月14日発刊

新宿不法占拠屋上座談会 「屋上の欲情を語る」
屋上論……都市の自然は屋上にある。

池袋西口界隈座談会 「国境を語る」
混血論……日本にイスラム教が入ってくれば三代目にはやさしいイスラムになる。
ボーダー論……国境は年中またいで行き来するものという感覚が日本人には欠落している。
日本文化輸出論……日本は今、文化を輸出している。その影響を意識する必要がある。
視点論……自分を積極的に現場に放り込む意志がないと情報酔い人間になってしまう。

作品)頁順に 巻頭写真(金城真喜子)/演劇ノート(コラム 篠本賢一)/世紀末通信(イラスト 真下茂俊)/日本無責任映画史(イラスト ハピィ氏橋)/カーニバルス(小説 林 日出民)/腐意(俳句 腐川雅明)/振り美車論(評論目良盛夫)


 


【第7号】 1999年9月9日発刊

深川木場サパー氏橋亭座談会 「不良を語る」
不良論……アジア共同体の中の個人主義的生き方は不良の立場になること。
ドラッグ論……日本はドラッグ文化を必要としない親和的社会である。
喧嘩論……相手と正対するのが喧嘩のルール。ただし、夫婦同士は真剣勝負をしてはいけない。

銀座バー座談会 「笑いについて」
笑い論……日本人は近年、笑っている自分自身を笑い飛ばすことを極度に恐れている。
会話論……自己解放なしに会話は決して始まらない。
小選挙区論……小選挙区制は国民の人間味を奪う。

作品)頁順に 世紀末通信(イラスト 真下茂俊)/極楽の借景=ハイク考(評論 腐川雅明)/私とNとの関係(写真 金城真喜子)/振り「美」車論(評論 目良盛夫)/木馬(詩 小松静江)/残さず喰え(詩 西沢雅野)/大衆考(評論野呂臍太郎)/使者(小説 林 日出民)/新宿昭和館通信(イラスト ハピィ氏橋)/脱亜入亜 アジア幻想(テキストと写真 林 日出民)
ゲスト特集 鈴木隆彦 「鈴隆界」
風餐ロシア支局レポート ハバーロフスクの風人たち 岡田和也・アールト=イヴァーノフ

                                                                      ▲楽座TOPへ